「リョ〜ぉ?そろそろ起きて。朝ごはんできてるわよぉ〜。」 香の爽やかな声と共に、俺を起こしにくる足音が聞こえる。 俺はそれに気付いたが、そのまま目を瞑っていた。 べっ、別に香に起こされたいって訳じゃないんだぞ。 ただ、何となく、何となく・・・なんだからな。 リョウは、そう自分自身に心の中で1人言い訳をしていた。 「リョウ、起きてっ。もうお昼になっちゃうわよ。」 香はいくら呼んでも目を覚ましそうにない(ように見える)リョウを起こそうとベッドの傍に近づいた。 「しょうがない、ハンマーで叩き起こすしかないわね。」 そう言って香はハンマーを出そうとした刹那、リョウが香のほうへ寝返りを打ち、その流れで行き成り香に抱きついた。 「えっ・・・・・、ちょっ、ちょっと!リョ、リョウ?!」 気付けば、香は既にベッドの中でリョウの逞しい腕に抱きしめられ、脚も挟まれていた。 「ちょっと、あたしはアンタの抱き枕じゃないのよっ、もぉっ!」 リョウは一向に動く気配がない。 香はその状態が恥ずかしくなってきて、腕の中から出ようともがいたが、リョウの抱きしめる力が強すぎて敵わない。 もう心臓が口から出そうなくらいドキドキして、顔は茹でダコ状態だ。 ハンマーを出すことも出来ず、呼吸することすら儘ならなくなっていた。 この状態でリョウが起きたら、なんて言うんだろう・・・? きっとお前みたいな男女なんか抱いても、、、、とかって言うんだろうな。。。 「はぁ〜っ。」 香は深い溜息を漏らした。 しかし、リョウはリョウで、自分自身の無意識の行動に驚いていた。 が、今まで抱きしめたいが触れてはいけないと、何年も何度も葛藤し、我慢していた相手が今、自分の腕の中にいる。 早く離さなければという思いはあるのだが、止めることができない。 それは、リョウが今までに経験したことのない、満たされるという感覚、包まれるという感覚、言葉で言うとするならばそういうことなのだろうか。 (包んでいるのは、俺なのにな・・・。) 心も身体も魂さえも、リョウの全てで香を欲し、香を抱きしめたことでリョウの全てが喜びに満ち溢れていた。 リョウが寝るときは、ほとんど上半身裸だ。 リョウが強く抱きしめていることで、香の、実は豊満な胸が、リョウの体に押し付けられている。 くぅっ、これは俺の想像以上に柔らかくて揉みがいがありそうなおっぱいだ・・・。むふっ。 リョウは無意識に顔をニヤけさせて香の胸を触ろうとしていたが、あと少しで触れられる、というところで何とか我慢した。 だが今度は、香料などではない、香の体そのものが発する馨しい甘ぁ〜い香りが鼻腔を擽る。 そして、その香りは俺の理性を難なく打ち崩し、本能を目覚めさせようとしていた。 まっ、拙い。さすがにこれ以上は拙いな。 気付けば、リョウの下半身は今にもはち切れんばかりになっていたのだ。 さすがにこんなに密着していれば、香だって俺がもっこりしてきたことぐらいわかってしまっただろう。 「・・・っ、ぐふっ、ぐふふふっ!もっこりちゅわぁ〜ん!チューしよっ、ちゅぅ〜・・・」 行き成り喋りだしたと思ったら、リョウはだらしない顔で唇を突き出しながら、香にチューを迫った。 「己はまたくだらん夢を見ているのかぁ〜っ!」 香はリョウのおかげ(?)で、自分を取り戻し、100tハンマーをリョウに振り下ろした。 「早く起きろっ!ったくもう・・・。夢の中の誰かとあたしを・・・混同しないでよね・・・・・」 香は小さな声で呟き、内心ホッとしながらキッチンへと戻っていった。 「また香を傷つけちまったな・・・、はぁ〜っ。」 リョウは大きな溜息を漏らした。 「それより俺、マジでヤバイな。」 先程の香の抱き心地が、胸の柔らかさが、馨しい香りが、そして、どこからともなく湧き上がってくる充足感が・・・、俺に刻みついて離れない。 リョウは最近、香に対する想いと欲望を自分自身ではコントロールできないほど、気持ちが限界を超えていることに気付いていた。 この想いは生きている限り減ることは絶対になく、増え続けるだけだ。 もうリョウの心は香で満杯になって既に溢れはじめている。 それは、これからも止め処なく溢れ続けていくのだろう。 明日どうなっているかもわからない、そんな世界に生きている俺が、その確信だけはあるんだ。 しかし、こんな日がやって来るとは昔の俺では想像すらつかなかったぜ・・・。 まぁ、今までよく我慢してこれたと、自分自身を褒めてやりたい気もするがな。 リョウは、そんな自分を嘲笑った。
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